乗鞍スカイライン、ラストランツーリング ◇極寒の中ご来光へ◇
4時だ。携帯のアラームが鳴る。 とりあえず携帯を止めまた布団に入る。天井を見つめて今日の予定を頭の中で整理する。 ペンションアリスのライダーハウスであるパンタには、私を含め、5人のライダーが相部屋で寝ている。 昨日はアリスのコースディナーで久しぶりに腹いっぱいうまいものを食べることができた。 しかもご飯がおかわりし放題! 温泉のお風呂にゆっくり浸かり、22時すぎには布団で眠りについた。 完全に疲れも取れて元気100倍だ。 ごそごそ起きだして着替えを始めると、BM乗りのsnyさんも起きだしてきた。 彼とは一緒にご来光を見に行こうと約束している。 他のメンバーを起こさないように準備を整えて外に出ると・・・ さ、寒い・・ もう一度部屋へと戻る。 「外は、さ、寒いよ」 分かりきったことを報告した後、二人にて外に飛び出した。頭上には満天の星が広がる。 (後から考えてみると、このときの気温は大体2〜3度程度。乗鞍頂上は氷点下だったのではないだろうか。) みんなを起こさないように静かにバイクを発進させ、星明りに輪郭だけそびえる乗鞍岳へと走り出す。 タイヤが温まっていなのか、やたらと滑るが、スピードも出ていないのでさほど気にならない。 街灯なんかはもちろん無い。暗闇のコーナーに突っ込んでいく。 おっと! こんな早朝(いや、まだ夜だ)から写真家さんはすでにスタンバッている。 カメラをお気に入りの場所にセットし、あとは日が昇るのをまっているという様相だ。 写真家さんの路駐に気をつけながら上っていくと、今から日が昇るであろう地平線がうっすらと白くなってきている。 日の出に間に合うだろうか。だんだん気が焦る。 やっと畳平前の県境ゲートに到着した。 ここから先が乗鞍スカイラインだが、ゲートはまだ閉まっている。 しかし、ゲートの向こう側にはすでに車がたくさんこちら向きに並んでいる。 ゲートをはさんで岐阜側と長野側の車が渋滞で止まっている様はすこし奇妙な光景だ。 乗鞍スカイラインは岐阜側ゲートが平湯にあり、長野側ゲートが畳平にある。 そのゲートのうち、平湯ゲートは3時にオープンするため、すでに車が上がってきているのだ。 だが畳平ゲートは7時オープンだ。行き場のない車が詰まっている。 ここに集まった車は7時までは身動き取れないだろう。 どうせ車は動かないんだからと、路上にバイクを止め、大黒岳(だっけ?)を登ることとした。 頂上まではほんの15分ほどで到着だが、とにかく寒い! 風が強く帽子も吹き飛ばされそうだ。 風をよける木々もまったくない。 山を上り始めると、やはり写真家さんたちが場所を確保して、日の出まで風に背を向けてただじっと耐えている。 しかし、きつい!さむい!風で耳が痛い! もういいから帰ろうかと思ったほどだ。 足元では霜柱が、私の足でしゃりしゃりと崩れていく。 やっと頂上に到着するとそこにはセメント製の避難所がある。 ありがたい。やっと風をよけられる。 避難所に入ると、ただ風があたらないだけなのに、まるでストーブでも焚いているかのようにあたたかい。 まさに天国だ。 「食べます?」snyさんがお菓子のグミをくれる。 こういうところで食べるとすごくうまい。 「出た!」 誰かが叫んだ。人がカメラに駆け寄る。にわかに慌しくなる。 私も避難所を飛び出し、前へと出る。 見ると遠くの山脈に米粒のような黄金の輝きが見える。 「すっげー」 太陽が動いているのがわかる。見る見る光の粒が大きくなる。 おっといかんいかん、写真をぱちり。
ふと横を見ると、隣の山の上にレンズ雲がかかっている。 日本海からやってきた雲がのぼり、それが太平洋側に吸い込まれるようにくだっていく。 すごい、本当にここは日本列島のてっぺんなんだと思った。 そういえば昨日剣ヶ岳でおじさんがこんな話をしていた。 「ほら、そこに水を流すとな、その水は日本海へと流れる。でも、こっちに水を流せばその水は太平洋へと流れる。 ここは天下分け目の山なんだよ」 ◇人生最高度の転倒◇
さて、日も無事のぼり、そろそろ下りますか。 ところがその下りで事件が! そう、下りはじめてすぐのこと、左ヘアピンに例のごとくハングオンでつっこんでいく。 「ガーッ」 いつもの心地よいステップの音を聞きながら・・・ あれっ、リアタイヤの感触が消えた。やば!スリップだ。 ハイサイドになっちゃたまんないと、アクセルを開ける。 バイクはくるりと向きをかえ、スラッシュガードを削りながら数メートル進む。 私はハングオンのフォームのまま左ひざと左つま先で滑っていく。 この時、私の脳裏には、Schottの革ジャンを何とか守る!これしかなかった。 さしてスピードも出ていなかったのですぐに停止、約3秒でバイクを起こしすぐにリスタート。 snyさん、見たねー 転倒というよりスライディングと言ったほうが近い感じだったため、バイクも体も、そして大事な革ジャンもダメージなし。 と思ってましたが、帰ってから確認すると、やっぱり膝が削れてました。(おー痛っ) 本当はこのままどっか走りに行こうと考えていたが、膝の血が止まらないため、一旦アリスに戻る。 血が止まるまで待ち、穴のあいたズボンを履き替えて時計を見るとすでに8時前。そろそろ出かけるとしよう。 昨日カメラに収めるのを忘れていた乗鞍高原へと走ってみる。 そこには広い牧場があり、貸し自転車も。 夏なんかに自転車で走るといいだろうなー 写真を数枚撮影し、またエコーラインを登る。 昨日はここから引き返したが、今日はこのままスカイラインを下ることとしよう。 しかし、スカイラインの登りは相変わらずの大渋滞だ。 「今度来るときも、スカイラインの登りは要注意だな。」 そう考えてすぐに否定した。 そうか、もう次はないんだ・・・ もったいない、もうバイクで走れないなんて。
◇高山でまったり◇
平湯の料金所をぬけて、高山市内へ向かう。 高山での目的は、お土産の朴葉味噌をGETすること。それと高山ラーメンを食べること。 一時間くらいかな・・・高山到着。一昨日通り抜けていった町だ。 まずは朴葉味噌をもとめてお土産売り場へ、 実は高校の時、修学旅行で食べた朴葉味噌が忘れられない。 3つ入りを3セット購入し、あとは高山ラーメンなどなどを購入。 もっともっといろいろ買いたいと思うが、バイクに乗りそうもない。 そこそこであきらめて今度はラーメン屋さんへ、 ガイドに乗ってたうまいラーメン屋さんへ到着。 ただ、薄くて私の口にはあいませんでした。
修学旅行の時にはなかった古い町並みが新しくできている。(笑) 作為的な町並みではあるのだが、旅気分は盛り上がる。 途中、みたらし団子の香りに負けてほおばりながら町を散策する。 ただ、ひとつだけ気になる点が・・・ それは、まだ膝から血がしたたり、靴下をぬらしていること・・(爆)
◇平湯・穂高・安房峠◇
バイクにまたがり、平湯へと走り出す。 途中、穂高のロープウエイ乗り場まで走るが、 駐車料金がもったいないので、そのままUターン。 安房峠のうねうね道をぬけ、R158から県道84号線に入り、 最後のスタンドでガソリンを満タンにする。 今日の夜食(アリスには夕食は予約していない) を購入してアリスに戻る。 このあたりからだんだんと無謀な計画を思いつく。 そうだ、明日は下道で一日で帰ろう。 |